5.09.2010

ご機嫌をとる時代ではあるまい、大事に至る前に、火消しできる双方のチャンネル作り・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 上海万博が始まった。10月末の閉幕まで、何かと中国に世界の耳目が集まるのだろう。大阪万博や愛知万博などを経験した日本にすれば、素直に開催を祝いたいが、そうばかり言っていられない事情もある

 中国艦艇10隻の軍事演習の件である。沖縄本島沖での公海上の出来事だが、日本は中国の艦載ヘリが異常接近したと抗議した。これに対し、中国は公海上の演習を執拗(しつよう)に監視する方に問題がある、と反発した。このまま行けば日中双方で気まずい思いだけが残る

 120年余り前、清国の丁汝昌・提督率いる北洋艦隊が、7千トン級の軍艦を旗艦として、長崎港に寄港した。当時の日本海軍には3千トン級が1隻あるだけ。日中海軍力の差は歴然としていた

 上陸した水兵たちが粗暴な振る舞いを引き起こしたものの、当時の明治政府は「腰を低くして清国艦隊のご機嫌をとり、清国水兵と衝突しないよう一般市民に指示した」(石光真清著『曠野の花』)という。世に言う「長崎事件」だ

 今はどちらかが、ご機嫌をとる時代ではあるまい。大事に至る前に、火消しできる双方のチャンネル作りが急務だろう。

 5月3日付 編集手帳 読売新聞
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