何年も前のこと、若い人が書いた文章の「真逆に言えば…」という表現にとまどったことがある。「真逆」に仮名を振るとすれば「まさか」だが、それでは意味が通らない
「正反対」の意味で「まぎゃく」と読むらしいことを、いまは知っている。見聞きはしても自分では使うことのない言葉だが、鳩山首相の政治信条はひょっとしてこの2文字に尽きるのではないか、と思うときがある
何も深く考えず、とにかく自民党政権がしたこと、決めたことの逆へ、逆へ。前政権が右を選んだから左へ走り、前を選んだから後ろへ動く。熟慮も要らず、勉強も要らず、楽ちんには違いないが横着きわまりない。その弊害が「普天間」に表れた
自民党政権下でまとめられた現行案と大筋で同じ案をもとに、政府は最終調整に入るという。「最低でも県外だ」「埋め立てでなく、杭(くい)打ち桟橋だ」と、前政権の向こうを張って逆へ、逆へ走ってはみたものの、失敗でした――という白旗に等しい
首相は例のごとく、「現行案しかないと、勉強して分かりました」とでも答えるのだろうか。真逆ね。読みは「まさか」である。
5月20日付 編集手帳 読売新聞
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