5.20.2010

生きているうちに「いのちを守りたい」会期は残り1か月・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 戦後、酷寒のシベリアで多大な苦難を強いられた元抑留者にとっては、ようやく山の頂が指呼の間に見えてきた思いであろう。平均年齢は85歳を超す。「生きているうちに」の叫びにも切実さが募る

 特別給付金を元抑留者に支給する法案が今国会に議員立法で提案され、成立する見込みだという。抑留期間に応じて25万~150万円が支給される。抑留の実態調査や遺骨収集など総合対策を政府が講じる方針も盛られる

 元抑留者たちが求めてきたのは、過酷な強制労働の報酬に相当する国家補償である。だが、国相手に未払い賃金の支払いを求めた長い裁判闘争は敗訴で終結した。旅行券や銀杯交付という慰謝事業も元抑留者たちの怒りを買っただけだった

 6年前から、抑留問題解決のための法案を度々国会に提出してきたのは民主党である。幹事長時代の鳩山首相が、国会で法案の重要性を訴える趣旨説明をしたこともある。政権交代で期待は高まったが、今度は党と政府、議員間の調整で手間取った

 会期は残り1か月。郵政改革法案など波乱含みだ。「いのちを守りたい」と語る首相の対応やいかに。

 5月16日付 編集手帳 読売新聞
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