5.15.2010

W杯23人全員がハードワークをする日本人らしいサッカー・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 蠅(はえ)というのは気の毒な虫で、良く言われることはあまりない。「蠅が灯心を使うよう」とは無力であることの例えであり、しつこくつきまとう若者は江戸の昔、「蠅若衆」と呼ばれて嫌われてもいる

 「その君たちをお手本に…」と言われたのだから、不遇の蠅たちにとってきのうは一世一代の佳(よ)き日であったろう。サッカーのワールドカップ(W杯)南アフリカ大会に出場する日本代表選手23人を発表した岡田武史監督の言葉に「蠅」が出てきた

 〈蠅がたかるように何度もボールを奪いにいく運動量がチームの長所であり、全員がハードワーク(重労働)をする日本人らしいサッカーしかない〉と

 日本では古来、広虫、虫麻呂と、人名にも用いるなど、虫の霊力を尊んできた。蠅のようにたかり、蝶(ちょう)のようにかわし、蜂のようにゴールを刺す変幻自在の虫になるならば、欧州や南米の強豪勢も手こずることだろう

 大会が幕ひらくころ、日本は梅雨である。しばらく遠のく青空に代わり、地上に躍動する“サムライ・ブルー”の青地のユニホームが目を楽しませてくれる日を、いまから胸をときめかせて待つ。

 5月11日付 編集手帳 読売新聞
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