1.09.2010

「自発的微笑」お母さんのおなかの中で赤ちゃんが微笑している・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 花が咲く、の〈咲〉という字には「わらう」の意味がある。漢和辞典によれば、中国ではもっぱらこちらの意味で用いられたらしい。日本では「鳥鳴き、花笑う」という慣用句から、花のひらく意味に転用されたという

 テレビの正月番組を見ても、街を歩いても、〈咲〉の字が似合う笑顔には出くわさなかったが、きのう、年末年始の新聞を整理していて東京版に見つけた

 お母さんのおなかの中で赤ちゃんが微笑している。聖心女子大の川上清文教授を中心とする研究チームが、超音波診断装置を使って撮影に成功したという

 23週と1日目の胎児で、約3分間に計6回、1回あたり平均4・7秒の微笑を見せた。外的な刺激と無関係に表れる「自発的微笑」で、人の笑顔やおもちゃなどに反応する「社会的微笑」とは区別される。自発的微笑は新生児にもみられるが、胎児で確認されたのは初めてという

 生まれてくるのが待ち遠しくて口もとがついほころびた、写真はそんなふうにも見える。胎児が仏頂面をするような新年ではいけない。小さな一輪の花に、いいおみくじを引いたような気分を味わっている。

 1月5日付 編集手帳 読売新聞
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