1.31.2010

煮詰まってます「火中の栗」移設を容認していた市民が反対へと転じた・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 作者は教師だろう。俵万智さんの「花咲くうた」(中公文庫)から一首をひく。「勉強が煮詰まつてますと泣く子あり まづ〈煮詰まる〉を辞書に引け君」(寺井淳)

 議論が出尽くして論点が整理され、問題が解決に近づくことを「煮詰まる」という。別に、鍋が煮えすぎて水分が蒸発してしまうことも意味する。この生徒は八方ふさがりの脳ミソを煮えすぎた鍋にたとえたのだろう

 外交の懸案が煮詰まりつつある。どちらの意味かは言うまでもない。沖縄県名護市長選挙で、普天間飛行場の移設受け入れに反対する新人候補が当選した

 もとは移設を容認していた市民の心を拒絶へと転じさせたのは、ほかに移設先がいくらでもあるかのごとく装った鳩山首相の発言である。「それならば我が町が火中の栗を拾わずとも…」と、市民は思っただろう。名護市に移設する日米合意案の実現はいよいよ困難の度を増し、さりとて名護市に代わる移設候補地はいまのところ皆無である

 決着期限まで残り4か月、袋小路に出口をどう見つけるのだろう。外交が煮詰まってますと泣く首相あり――では、歌にもならない。

 1月26日付 編集手帳 読売新聞
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