もてる男の十か条が落語「いもりの黒焼」に出てくる。〈一見栄(いちみえ)、二(に)男(おとこ)、三金(さんかね)、四芸(しげい)、五精(ごせい)、六おぼこ、七ゼリフ、八(や)力(ぢから)、九(きゅう)肝(きも)、十(と)評(ひょう)判(ばん)〉。このうちひとつでもあれば、何とかなるらしい
「見栄」は身なり、「男」は顔かたち、「精」は勤勉、「おぼこ」は純情、「肝」は度胸、「評判」は人望であるという。なるほど、身なりが真っ先にくるのね――と、ブラウンさんの溜(た)め息が聞こえてきそうである
男性向け総合誌『GQ』英国版が、今年の「最もダサい男性」に英国のブラウン首相を選んだ。北朝鮮の金正日総書記(8位)も寄せつけぬ首位で、ネクタイの趣味が決め手になったという
写真を見る限りはそうひどいとも思えないが、服装に一分のすきもない紳士の本場で、比較対象の水準が高いのはお気の毒である。さて、日本のあの人、この人のモテ具合はどうだろう
ママから12億円の小遣いをもらって気づかない首相がいて、土地の購入に出所不明の4億円をポンと差し出す与党幹事長がいる。“一見栄”や“二男”はともかくも、“三金”だけは立派な色男コンビだろう。「立派な」は取り消す。
1月6日付 編集手帳 読売新聞
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