谷川俊太郎さんが詞を書き、芥川也寸志さんが曲をつけた『日航マーチ』という歌がある。その一節に、〈星を背に 北極の上を/安らかな眠りをのせながら/ジェットは うかぶ…〉とある
歌が作られたのは東京オリンピックの前年1963年(昭和38年)という。スピードが美徳とされた高度成長下にあって「飛ぶ」や「翔(かけ)る」ではなく、乗客をそっと両の手で包むかのような〈うかぶ〉が印象的である
ジャーナリストの弓狩匡純(ゆがりまさずみ)さんは著書『社歌』(文芸春秋刊)に書いている。「大量輸送時代の到来により、スピードとともに安全性がより一層求められることを(谷川さんは)まるで予見していたかのよう」であると
日本航空の経営再建をめぐる協議がいよいよ大詰めを迎えている。社内には不安と動揺もあるに違いない。そういうときであればこそ、運航に携わる一人ひとりに、〈うかぶ〉の一語にこめられた乗客の祈りを、もう一度、胸に刻み直してもらおう
歌詞には、こうもある。〈今日の夢 明日へとになうつばさ 日本航空〉。翼の安全が保たれずして、再建の夢が実を結ぶ明日は来ない。
1月13日付 編集手帳 読売新聞
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