1.16.2010

験を担ぐ人がにわかに増えてくる受験シーズン季節・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 商家の主人が奉公人を呼ぶとき、普通は手のひらを下に向けて動かす。米の値が上がるのを願う大阪・堂島の米相場師は、下に振る動作を嫌い、手のひらを上にして「おいでおいで」をした。〈堂島のすくい呼び〉という

 堂島の商人ほどではないにせよ、験を担ぐ人がにわかに増えてくる季節である。受験シーズンが本番を迎え、週末には大学入試センター試験も控えている

 受験のお守りが話題になるのもこの時期で、今年はタコの記事を読んだ。三重県鳥羽市の水族館に合格祈願のタコ神社が登場したという。英語の「オクトパス」に「置くとパス」を掛けた洒落(しゃれ)らしい

 英単語や数式や年号の詰まった頭を言葉遊びがほぐしてくれるならば、それも御利益だろう。一年で最も冷え込む「寒の内」、試験会場に向かう足を乱しかねない天候の心配に加えて今年は、新型インフルという敵もいる。誰もが両手で春を“すくい呼び”したい心境に違いない

 なかには熱のある頭を水枕に載せ、布団のなかで手のひらを下に向けて「下がれ、下がれ」と念じている風邪ひきの受験生もいるだろう。大丈夫、時間はある。

 1月12日付 編集手帳 読売新聞
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