7.02.2009

永田町には寛政ならぬ「感性の改革」金銭に対する感度の鈍さ・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 老中松平定信は「寛政の改革」で文武に精を出すよう促し、これまでに学んだ師匠の名前を書き出せ、と旗本衆に命じた。遊び暮らす連中は困ったらしい

 弓は誰、馬は誰、学問は誰と、故人の名前ばかりを挙げ、「只今(ただいま)は皆、死去つかまつり候」と書く者が続出したと森銑三「古人往来」(中公文庫)にある

 「うそも大概にせよ、貴殿のことなど存じ申さぬ」とあの世から苦情が届くわけでもなし、書類のでっち上げに故人の名前が借用されるのは、今も昔もあまり変わらないようである

 鳩山由紀夫・民主党代表の資金管理団体が故人などを「寄付者」と偽り、政治資金収支報告書に記載していた。架空の献金は約90人分、4年間で総額2177万円にのぼる。違法献金事件で辞任した小沢一郎前代表のあとを受けて「党の顔」になった人に、この不祥事は情けない

 責任逃れの魔法の言葉「秘書が」にも懲り懲りだが、たかだか千万円単位の“はした金”にまで目が届かなくて――とでも言いたげな反省の弁の軽さ、金銭に対する感度の鈍さについていけない。永田町には寛政ならぬ「感性の改革」が要る。

 7月2日付 編集手帳 読売新聞
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