7.29.2009

“カッコ悪い”名前「ダサイ族」と呼ぶ運動、浸透と効果のほどは・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 パトリシア・コーンウェルの推理小説「検屍官(けんしかん)」(講談社)に、「がん作り棒」という言葉が出てくる。登場人物がたばこをそう呼んでいた。その名称が広がれば愛煙家もちょっと一服しにくかろう

 「借金」を「キャッシング」と呼べば借り手の警戒心は薄れ、「売春」を「援助交際」と偽れば未成熟な心に落とし穴を掘る。路上の違法駐車も「青空駐車」と聞けば快晴の空が目に浮かび、呼び名とは不思議である

 その不思議な力で若者に暴走族離れを促すという。沖縄県警宜野湾署が暴走族を「ダサイ族」と呼ぶ運動を始めた

 “カッコ悪い”名前を募り、「ゴキブリ族」「よわむし族」など応募685案から選んだという。つい先日は地元住民による「ダサイ族を許さない市民総決起大会」も催された。浸透と効果のほどは、さてどうだろう

 かつての英国の二大政党、ホイッグ党(スコットランドの裏切り者、の意味)とトーリー党(アイルランドの追いはぎ、の意味)のように、相手から浴びせられた罵言(ばげん)をそのまま平気で自分の党名にした例もある。ダサイ族の面の皮が政治家ほど厚くないことを願う。

 7月29日付 編集手帳 読売新聞
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