7.14.2009

衆院解散・総選挙「自分が解散して」美質かどうかは知らない・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 サッカーの元Jリーガー呂比須(ろぺす)ワグナー選手は語っている。〈一番うれしい試合は、自分がゴールを決めて勝った試合。2番目にうれしい試合は、自分がゴールを決めて負けた試合〉であると

 サッカーの名言を集めた「蹴球神髄」(出版芸術社)の一節だが、正直といえば正直、個人技に身を削る競技者には、自分本位もときに美質だろう。政治家にも美質かどうかは知らない

 〈一番うれしい選挙は、自分が解散して勝つ選挙。2番目にうれしい選挙は、自分が解散して負ける選挙〉…というわけでもあるまいが、麻生首相がきのう、衆院解散・総選挙(8月30日投票)の日程を決断した

 3代続きの政権投げ出しはご法度とはいえ、都議選で惨敗した翌日である。「うれしい選挙」の1番目と2番目の間に、〈ほかの誰かが解散して勝つ選挙〉という選択肢も考慮し、てっきり何日間か悩むものと思いきや、これが悩まない。空恐ろしいくらい、いい度胸をしている

 党のために一身をなげうつ政治家ならば過去にもいた。一身のために党をなげうった政治家はいない。ともあれ、キックオフの秒読みが始まる。

 7月14日付 編集手帳 読売新聞
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