時の風雪に磨かれた慣用句というのは、どれも味わい深く、あれこれ改変して遊ぶこともできる。時節柄、「解散」の一語を用いて遊んでみる
麻生降ろしの風が吹き荒れる前に解散権という「伝家の宝刀」を抜きたかった首相には、〈転ばぬ先の解散〉(=杖(つえ))だろう。鳩山由紀夫代表の“故人献金”問題に幕を引きたい民主党には〈臭い物に解散〉(=蓋(ふた))の歓迎ムードも見えなくはない
東京都議選で惨敗した自民党では多くの議員が〈泣き面に解散〉(=蜂)を嘆き、民主党の思うつぼ、〈飛んで火にいる解散〉(=夏の虫)になってしまうと焦りを募らせる
首相に批判的なグループは〈敗軍の将、解散を語らず〉(=兵)が筋ではないか、〈あとは野となれ解散〉(=山となれ)は断じて容認できないと言う。派閥の領袖をはじめとする首相擁護派は〈和をもって解散〉(=貴しとなす)を――と党内の一致結束を訴えているが、さて、どんな具合に落ち着くだろう
衆望も求心力も散々な首相が抜き放つ宝刀ではあれ、〈腐っても解散〉(=鯛(たい))、あすの日本を照らしもすれば曇らせもする一票になる。
7月17日付 編集手帳 読売新聞
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