7.27.2009

戦後64年「無名の元兵士たちの声」戦争賛美か反戦か戦争とは何か・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 戦後64年を前に、これまで沈黙を守って来た旧日本軍の元兵士らが、自らの戦争体験を語り始めている。同時代の出来事として、あの戦争を語れる人の多くも今や80歳代以上と高齢だ

 長尾栄治監督が撮影したドキュメンタリー映画「語らずにシねるか! 無名の元兵士たちの声」(45分)は、地味だが貴重な証言集だ。老いた元兵士らの淡々とした語り口からは、あの時代の空気が伝わって来る

 2歳上の兄に続いて志願した元少年兵は「アジアの平和のために戦わねばと真剣に考えていた」と追想する。別の元兵士は「当時は戦うのは国の名誉のためであり、兵隊に行けないことは恥ずかしいことだった」と証言する

 特攻隊員など3人の兄を戦争で亡くした女性は「(兄たちは)国のためになっていると、私も何か誇らしい気持ちだった」と語り、「いまは本当にむなしい」と涙ぐむ

 証言からは、戦争賛美か反戦かでは割り切れない複雑な心境がうかがえる。戦争とは何かを考えるのによい材料である。映画の上映と元兵士の証言は、8月11~13日、東京・中野駅南口の「なかのZERO本館」で行われる。

 7月27日付 編集手帳 読売新聞
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