先日の本紙「よみうり時事川柳」に、〈宝刀の切れ味トギの出来次第〉とあった。麻生首相が柄(つか)に手をかけた解散権の宝刀も、切れ味は「研ぎ」ならぬ「都議」次第だね――と、お見事である
衆院選を受験に例えれば、試験官(有権者)に合否の判定を仰ぐべきは景気や外交の各科目に取り組んできた麻生さんであり、ここで首相を交代させれば“替え玉受験”になる。宝刀は麻生さんが抜くべし、という首相擁護派の言い分には一理ある
受験ではなく野球に例えれば、足のふらつく先発エースが引き続きマウンドに立つのは“捨てゲーム”の意思表示であり、競技(選挙)を冒涜(ぼうとく)する。九回の裏まで勝機を求め、宝刀は救援投手にゆだねるべし、という反麻生派の言い分にも一理ある
世の人々も一理と一理のあいだで迷っているのだろう。本紙の世論調査では、自民党は選挙に「麻生首相で臨むほうがよい」が39%、「別の人に代わるほうがよい」が44%と割れている
注目の東京都議選も終わった。「抜けば玉散る氷の刃(やいば)」か、「抜けば錆(さび)散る赤(あか)鰯(いわし)」か、宝刀の切れ味が知れるまで、そう時間はかからない。
7月13日付 編集手帳 読売新聞
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