新約聖書のマタイ伝に、〈汝(なんじ)の敵を愛せよ〉とある。カトリック信者の麻生首相には先刻承知の教えだろうが、読み間違いの名人は〈汝の敵に愛されよ〉と誤読したのかも知れない
わが手で衆院を解散したい麻生さんを、「その調子。反麻生勢力に負けるな。踏ん張れ」と励ましたのは野党の民主党である。都議選に惨敗したあなたが好き、衆望のないあなたが好き――と、これほど「敵」に愛されて総選挙に臨む首相はいない
自民党内をまとめきれず、解散の間際まで醜い泥仕合を演じるわ、有権者の心を射止める弓矢となる政権公約(マニフェスト)づくりは遅々として進まないわ、「敵」に愛されるにもほどがある
鴨(かも)が葱(ねぎ)を背負(しょ)ってくるどころか、鍋やコンロまで背負った鴨が祝い酒を一升ぶらさげて、「さあ、召し上がれ」と現れた。民主党の目にはそう映るだろう
巷(ちまた)では「がけっぷち解散」「やけくそ解散」等々の呼び名がささやかれている。選挙は水ものであり、ごちそうのカモさんが鍋のなかでひと暴れ、ふた暴れしないとも限らないが、小欄ではとりあえず「カモネギ解散」と名づけておく。
7月22日付 編集手帳 読売新聞
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