7.31.2009

上方演芸資料館の移転構想、ムチャクチャでござりまする・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 いまは亡き喜劇役者の藤山寛美さんが桂米朝さんとの対談で、大阪・花月劇場の愉快な思い出を語っている。夏の盛りに冷房が故障した。客はうだる暑さに閉口したが、「売店のアイスクリームが全部売れてしまうまで故障が直らなんだ…」と

 対談集「一芸一談」(桂米朝、淡交社)の一節にある。偶然か、さにあらずかはともかくも、劇場を運営する吉本興業は金銭を大事にする社風で知られる

 その企業イメージもわざわいしたか、大阪府立上方演芸資料館(ワッハ上方)の移転構想をめぐり、橋下徹知事から「がめつい」と噛(か)みつかれた

 資料館は現在、吉本興業の所有する建物に入居している。「恒久的な入居を前提とした特別仕様の施設であり、資料館を移転させるのならば相応の補償を」と、吉本側は府側に告げた。財政難に頭を悩ます知事には、これが欲得ずくと映ったらしい

 かつて花月劇場を沸かせた漫才の花菱(はなびし)アチャコさんは「ほんまにもう、ムチャクチャでござりまするがな」で一世を風靡(ふうび)した。いずれの言い分が「ムチャクチャでござりまする」か、互いに頭を冷やして語らう以外にない。

 7月31日付 編集手帳 読売新聞
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