7.24.2009

「巧言令色」一票めあてのばらまき政策が言葉たくみにちりばめられ・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 ことば遊びの名作は数あれども、この季節にふさわしいのは、〈素麺(そうめん)冷食涼しいかな縁〉だろう。論語の一節、〈巧言令色鮮(すくな)いかな仁〉をもじり、縁側で食べるよく冷えた素麺はおいしいね、と

 二十四節気の「大暑」も過ぎ、列島はこれから酷暑に包まれる。いつもならば素麺冷食の恋しさもひとしおだが、今年は衆院選がすぐ先に控えている。もじりの原典、巧言令色(口がうまく、愛想のいいこと)のほうが気になるという人も多かろう

 一票めあてのばらまき政策が言葉たくみにちりばめられていないか、各政党のマニフェスト(政権公約)にしっかり目を凝らさねばならない

 その場限りの巧言令色に有権者が失望させられるのは昔からのようで、劇作家の高田保は59年前の随筆集「ブラリひょうたん」(創元社刊)のなかで、入れ墨コンクールの開催を唱えた。各候補者は公約を入れ墨に彫り、裸になって披露し合え、と

 入れ墨は見たくもないが、心組みはそうあるべきだろう。どこぞの政党から漏れ聞こえてくるところの、党とは別個の候補者限定マニフェストなどは姑息(こそく)の極み、沙汰(さた)の限りである。

 7月24日付 編集手帳 読売新聞
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