10.13.2008

千年以上の歴史を持つ二胡・・・ 編集手帳 八葉蓮華

千年以上の歴史を持つ二胡・・・ 編集手帳 八葉蓮華
哀愁を帯びた音色で知られる中国の民族楽器・二胡は千年以上の歴史を持つと言われる。片や西洋楽器の代表格バイオリンの歴史は五百年ほど◆どうしてバイオリンは世界中に広まり、二胡は中華世界だけなのか。東京をベースに国際的に演奏活動を続ける二胡演奏家の許可さん(47)(南京市出身)は20年前、日本で東西比較文化を学んだ時に考えた◆「伝道思想を持つキリスト教文化と、そうではない中華文化の違いがある。二胡を“革命”しない限り未来はない」。以来、2本の弦を弓で弾く二胡で、西洋楽器と融合可能な音色を生み出す演奏法を模索した◆幾度かの試みを経て、今年はベルリン・フィルハーモニー管弦楽団から誘いを受けるまでになり、同楽団の弦楽五重奏団との共演が、ドイツと日本国内4か所で実現した。二胡と西洋楽器によるチャイコフスキーの「アンダンテ・カンタービレ」は、東西融合の音色だった◆「今後は二胡と西洋楽器との共演で、アジアの文化を世界に伝えたい」。日本を媒介して生まれた許可さんの願いは、21世紀の音楽のあり方を示しているかもしれない。

10月13日付 編集手帳 読売新聞

八葉蓮華、Hachiyorenge