決してすべからず・・・ 編集手帳 八葉蓮華
―本間様には及びもないが、せめてなりたや殿様に…。そう唄(うた)われた豪商にも連なる本間宗久は相場の神様として有名だ。江戸時代の米相場で連戦連勝、その極意を記した秘録の言葉は、相場格言としてあがめられている。例えば「まふ(もう)はまだなり、まだはまふなり」◆株式市場は、一日で1000円以上も乱高下するほど大荒れが続く。振り返れば、米国で株価が暴落し、ブラックマンデーと称されたのは21年前のきょう10月19日だった◆金融危機の震源地アメリカでは、そのブラックマンデーを超える幅の下落が、先月末からの3週間で4度もあった。いくらなんでももう下げ止まるだろう、と思ってもまだ下げ止まらない。まだ下がると青くなっていると、もう流れが変わっている◆同じ“米”市場ながら宗久翁でもこの先行きは見通せまい。秘録は「高下は天然自然の理(ことわり)」、「腹立ち売り、腹立ち買い、決してすべからず」とも説く◆市場の乱高下はもう終わるのか、まだ続くのか。株価の下落で製造業にまで暗雲が漂い、ボーナスやクリスマスにも影響必至と聞けば、株を持ってはいなくとも気が気でない。
10月19日付 編集手帳 読売新聞
八葉蓮華、Hachiyorenge