10.20.2008

かつて「樺太」と呼ばれた島・・・ 編集手帳 八葉蓮華

かつて「樺太」と呼ばれた島・・・ 編集手帳 八葉蓮華
ロシアのサハリンはもうすぐ雪がちらつき、長い冬を迎える。かつて「樺太」と呼ばれた島は、この数年、欧米の国際石油資本や日本の商社が参加する原油・天然ガス開発の特需に沸いた◆州都ユジノサハリンスクの郊外に通称アメリカ村がある。広々とした住宅と子供の学校、テニスコート…。資源開発事業「サハリン2」の従業員用施設だ◆海外から来た高収入の技術者と出稼ぎの建設労働者で島は活気づいた。物価は年に2~3割も上がり、不動産投機が過熱した。雇用は増え、富を得た者もいるが、人口の3割を占める年金生活者には苦しい日々が続く◆“バブル”はいずれはじけるだろう。サハリン2の約800キロのパイプラインと出荷基地は今年完成し、年明けにも液化天然ガスの日本などへの輸出が始まる。工事完了で数千人が島を去る◆北方領土も管轄しているサハリン州知事は、「石油やガスだけでなく、今後は加工産業にも力を入れたい。技術力のある日本企業を誘致したい」と言う。北隣の資源大国との付き合いは大切だが、領土問題は脇に置いて実利を取ろうという腹なら、虫が良すぎる。

10月20日付 編集手帳 読売新聞

八葉蓮華、Hachiyorenge