10.27.2008

誰からの救いの手もなく・・・ 編集手帳 八葉蓮華

誰からの救いの手もなく・・・ 編集手帳 八葉蓮華
1950年代の米国車の多くは、尾灯に翼のような独特の飾りを施していた。「テールフィン」と呼ばれるデザインは、ゼネラル・モーターズ(GM)が最初に採り入れた。当時無敵を誇った米軍戦闘機の尾翼がヒントという◆当時の「アメ車」は、米国の富と力の象徴だった。アイゼンハワー政権の国防長官を務めたGMのチャールズ・ウィルソン社長が、「GMに良いことは合衆国にも良いことだ」と豪語したのも、このころである◆それから半世紀がたち、創立100年の節目を迎えたGMが未曽有の苦境にある。昨年の赤字はじつに4兆円を超え、大恐慌のさなかにも出し続けた配当をやめた◆米国経済の主役は製造業の雄GMから、世界最大の証券会社、ゴールドマン・サックス(GS)に代表される金融業に移り、「GSに良いことは合衆国にも…」という現実がある。誰からの救いの手もなく、政府の低利融資で命脈を保つGMの姿は、今や米国の危機の象徴になった◆存亡をかけて、同業クライスラーとの合併交渉が大詰めという。飾りではない、浮揚する本物の翼になるかどうかはまだ分からない。

10月27日付 編集手帳 読売新聞

八葉蓮華、Hachiyorenge