11.09.2008

「119番の日」悲しいニュースが相次いでいる・・・ 編集手帳 八葉蓮華

「119番の日」悲しいニュースが相次いでいる・・・ 編集手帳 八葉蓮華
〈救急車の御利用を 子供さん達(たち)のお怪我(けが)などにも〉。1936年(昭和11年)の小紙にそんな見出しがあった。日本赤十字社東京支部が救急車の活用を呼びかけているという記事だ◆導入当初、「路上の大怪我は救急自動車で」とPRしたため、交通事故以外は呼べないと誤解されたらしい。記事には「日赤では一寸(ちょっと)したかすり傷にも利用することを望んでゐ(い)る」とある◆そんな時代もあったのかと驚くばかりだが、もちろん救急体制の草創期の話だ。戦後間もなくから「救急車足りぬ」「患者タライ回し」などの記事が頻出する◆60年代の読者投稿欄では「軽症者の救急車要請は断る仕組みにせよ」「症状の軽重は簡単に判断できない。規制には反対だ」と論争になった。以来、何十年も変わらぬ議論が続いている。これにも驚く◆きょうは日付に因(ちな)んで「119番の日」。救急隊員や医療関係者はだれもが懸命なのに、悲しいニュースが相次いでいる。救急医療のあり方、大切さを改めて考えずにはいられない。濫用(らんよう)しないよう自戒しつつ、いざという時に必ず助けてくれる119番であり続けてほしいと願う。

11月9日付 編集手帳 読売新聞

八葉蓮華、Hachiyorenge