11.23.2008

“人物鑑定機”の洗礼を受けなくてはならない・・・ 編集手帳 八葉蓮華

“人物鑑定機”の洗礼を受けなくてはならない・・・ 編集手帳 八葉蓮華
銀行ATMの指認証機のような装置に、左右の人さし指を順に乗せる。大きな目玉に似たカメラを顔に向けられ、写真を撮られた。先日、10年ぶりにアメリカを訪ねた時に経験した入国審査である◆9・11同時多発テロ以来、米国に入るにはこの“人物鑑定機”の洗礼を受けなくてはならない。日本でも外国人の入国者は同様の機械でチェックされる。ピリピリした社会になったものだ、と嘆息せずにいられない◆飛行機に乗ったり国境を越えたりする場合には、靴の中まで調べられても、指紋を採られても、まあ、やむを得ない。世界を飛び回っている人以外は、頻繁に体験するわけでもなかろう。だが、官公庁に入るたびにいつもそんな目に遭うとしたら、たまらない◆今でもすでに、霞が関の裁判所ビルには飛行機の搭乗口と同じ金属探知ゲートが常設されているが、これは犯罪を裁く場所という特殊事情が大きい。まさか厚生労働省に入る時まで、金属探知スティックで検査されることになろうとは◆いずれ入国審査のような機械が、役所の入り口に登場するのだろうか。憎むべきは卑劣非道な犯罪者である。

11月23日付 編集手帳 読売新聞

八葉蓮華、Hachiyorenge