11.22.2008

11月22日は語呂合わせで「いい夫婦の日」・・・ 編集手帳 八葉蓮華

11月22日は語呂合わせで「いい夫婦の日」・・・ 編集手帳 八葉蓮華
岡倉天心は大学で学びつつ妻帯したが、夫人はなかなか気性の激しい人であったらしい。夫が苦心して書き上げた卒業論文「国家論」を夫婦げんかでビリビリに裂いて捨ててしまった◆夫は仕方なく2週間のやっつけ仕事で「美術論」をまとめ、提出期限に間に合わせた。「天心の人生コースはここで決まったのかも知れない」と、孫の岡倉古志郎(こしろう)さんが「歴史よもやま話」(文春文庫)で語っている◆のちに日本美術院を創設する偉才を美術の道に導いたとすれば、夫婦げんかもそう捨てたものではない。きょう11月22日は語呂合わせで「いい夫婦の日」という◆明治安田生命保険が約1200人の既婚男女に夫婦関係を漢字で表現してもらったアンケート結果をみると、結婚15年目までの人は「幸」あるいは「愛」という回答が多く、そこを過ぎると「忍」の一字に入れ替わる◆古志郎さんによれば祖父は晩年、祖母から晩酌はお銚子(ちょうし)1本と決められていた。天心は家族の前でコナン・ドイルの推理小説を語り聞かせ、佳境に入ったところで沈黙して「もう1本…」と催促したという。“忍”にも戦術がある。


11月22日付 編集手帳 読売新聞

八葉蓮華、Hachiyorenge