11.27.2008

日馬富士(はるまふじ)体格の不利を稽古に次ぐ稽古で克服してきた・・・ 編集手帳 八葉蓮華

日馬富士(はるまふじ)体格の不利を稽古に次ぐ稽古で克服してきた・・・ 編集手帳 八葉蓮華
ヒノキ科の常緑樹、アスナロは漢字で「翌檜」と書く。あこがれのヒノキに明日はなろう、という意味の命名とも伝えられる。その人には、大関貴ノ花(故・二子山親方)が仰ぎ見るヒノキであったらしい◆幕内で最軽量の小兵ながら真っ向から相手に挑むところ、勝っても土俵の上で表情の緩まないところ、稽古(けいこ)の虫であるところ、なるほど貴ノ花に似ている◆モンゴル出身の関脇、安馬(24)改め日馬富士(はるまふじ)が大関に昇進した。まだ十両のころ、軽量の貴ノ花が強靱(きょうじん)な足腰を頼りに大柄な北の湖や輪島と渡り合う姿をビデオで見て、「いつの日か、こういう力士に…」と志を立てたと聞く◆貴ノ花が引退した日、相撲中継で解説の玉の海梅吉さんが語っている。「精一杯重い荷物を背負って、下りのエスカレーターの階段を一段一段のぼるような、そんな努力をした男です」◆杉山邦博氏の著書「土俵の真実」(文芸春秋)の一節だが、体格の不利を稽古に次ぐ稽古で克服してきた翌檜にも、同じ階段が待っていよう。外国人力士であることをふと忘れ、古風な日本人に懐かしくも出会ったような…不思議な人である。

11月27日付 編集手帳 読売新聞

八葉蓮華、Hachiyorenge