7.21.2008

もう世襲で地位を継ぐ時代ではない… 編集手帳 八葉蓮華

もう世襲で地位を継ぐ時代ではない… 編集手帳 八葉蓮華
明治維新期に暗殺された思想家の横井小楠(しょうなん)は、万延元年(1860年)に著した『国是三論』で、ワシントン以来のアメリカ政治の優れた一面として、大統領選挙の仕組みを紹介している。「大統領の権柄(けんぺい)、賢に譲りて子に伝えず」◆天下のための政治をするには、もう世襲で地位を継ぐ時代ではない。賢人を広く天下に求めよ。激動する幕末の世に向けて、覚醒(かくせい)を促す警鐘だった。以来、4年に1度の大統領選には日本も大いに注目してきたが、今年は関心の高さが際立っている◆米世論調査機関ピュー・リサーチ・センターが先月発表した24か国調査で、大統領選の行方を注視していると答えた人は、日本が83%で第1位。米国の80%を上回った。第3位は56%のドイツ、英国でも50%だ◆北朝鮮問題やイラク情勢、イラン核開発、基軸通貨ドルの揺らぎ、景気減速など、日本にとっての深刻な心配事がそれだけ多いということの反映なのだろうか◆万延元年の選挙では共和党のリンカーン候補が勝利した。民主党のオバマ氏であれ、共和党のマケイン氏であれ、真の賢人でなければ世界中が困る今の局面である。

7月21日付 編集手帳 読売新聞

八葉蓮華、Hachiyorenge