エラーを犯さないこと… 編集手帳 八葉蓮華
「エラーを連発するチームが優勝することはありえないが、エラーを犯さないことを至上目標とするチームが優勝することも難しい」──。プロ野球の話ではない。政府の防衛省改革会議がまとめた報告書の一節だ◆汚職や艦船衝突、情報流出など、不祥事を防止する「守り」だけでは十分でない。より積極的に本来業務に取り組む「攻め」が重要だ。そんな趣旨だろう◆残念ながら今の防衛省には、その積極性が欠けている。スーダンでの国連平和維持活動(PKO)参加問題が一例だ。日本大使館が普通に活動できるほど平穏な首都への司令部要員派遣の決断に4か月以上も費やした。幹部が「アフリカ派遣の意義を説明するのが難しい」と躊躇(ちゅうちょ)したためだ◆在日米軍再編問題でも、主管官庁なのに、ほとんど存在感を示していない。米軍普天間飛行場の移設は、停滞し続けている◆石破防衛相は省改革ばかりでなく、もっと本来の仕事に目を向けてほしい。大規模な組織改革は省の歴史に残る。政治家には魅力的な仕事だろう。だが、政権末期を迎えた同盟国の首脳が“遺産”作りに励むのを真似(まね)ることはない。
7月28日付 編集手帳 読売新聞
八葉蓮華、Hachiyorenge