12.05.2008

【チェンソー】総理大臣がかわること。チェンジ総理の略・・・ 編集手帳 八葉蓮華

【チェンソー】総理大臣がかわること。チェンジ総理の略・・・ 編集手帳 八葉蓮華
 「新語は毎日3語ずつ発生している」と述べたのは国語学者の見坊豪紀(けんぼうひでとし)さんである。国語辞典を編(へん)纂(さん)するために長年、見慣れない、聞き慣れない言葉を収集・分類してきた経験から割り出したという◆日々生まれる3語の多くははかなく消えていくのだろうが、世に知られる幸運な言葉もある。「明鏡国語辞典」の版元である大修館書店が全国の中高生から日常の若者言葉を募った第3回「みんなで作ろう国語辞典!」の優秀作品一覧を眺めている◆【乙男】(おとメン=乙女心をもっている男のこと)、【指恋】(ゆびこい=好きな人と携帯でメールをすること)といった具合である◆【チェンソー】とはどんなノコギリかしら…と思えばそうではなくて、「総理大臣がかわること。チェンジ総理の略」という。「福田から麻生に――した」などと用いるらしい。伐採された木の倒れる音を空耳に聴かせて、よくできた言葉ではある◆求心力が衰えて予算編成の司令塔にもなれず、支持率も低迷する首相のこと、若い人の新語辞書にこの一語を見つけたら憂鬱(ゆううつ)になるだろう。国語辞典の愛用者でないのは幸いである。

12月5日付 編集手帳 読売新聞

八葉蓮華、Hachiyorenge