12.12.2008

一芸に抜きんでた人は、夢も無駄には見ないらしい・・・ 編集手帳 八葉蓮華

一芸に抜きんでた人は、夢も無駄には見ないらしい・・・ 編集手帳 八葉蓮華
 囲碁の呉清源さんは若いころ、ときに夢のなかで妙手を見つけたという。「目がさめてから、形の一部をおぼえていることがあるそうだ」と作家、川端康成が「名人」(新潮社)に書いている◆ビートルズの名曲「イエスタディ」には、ポール・マッカートニーさんの夢に現れたメロディーから生まれたという語り伝えがある。一芸に抜きんでた人は、夢も無駄には見ないらしい◆普通は思い出せなくて、もどかしいのが夢である。将来はどうだろう。人が見たものを、脳の活動パターンをもとに画像で再現する。その技術を国際電気通信基礎技術研究所(京都府精華町)などが開発した◆「□」や「×」などの図形やアルファベットを見た人の脳から情報を読み取り、コンピューターの画面上に映し出す技術で、睡眠中の夢や脳裏の空想にも応用できる可能性があるという◆一芸なき身は時折、献立の記憶はおぼろながら、飲食の夢を見る。ほほう、きょうは刺し身だったか、熱燗(あつかん)まで一本ついちゃって…と、目ざめてから再現画像に見入る日がいつか訪れるのかも知れない。うれしいような、そうでもないような。

12月12日付 編集手帳 読売新聞

八葉蓮華、Hachiyorenge