「一陽来復」冬至冬なか冬はじめ ・・・ 編集手帳 八葉蓮華
日本初の近代的な国語辞書「言海」を著した大槻文彦は本名を「清復」という。「きよまた」あるいは「きよしげ」と読んだらしい◆人名にはめずらしい「復」の字は、冬至の日に生まれたことにちなんで付けられた。北半球で一年のうち夜が最も長くなる冬至は古来、陰から陽に転じる時の意味で「一陽来復」と称され、その「復」をもらっている◆あすは冬至、日の長短はともかくも、後を絶たない食品偽装や振り込め詐欺などで世相は濁り、不況の濁流にのまれて雇用の視界はきかない。いつにまして「清復」の二文字、清澄に復する日が待たれる年の瀬である◆実際には冬至のころから寒さが増し、昔の人は〈冬至冬なか冬はじめ〉と言い習わして戒めた。景気はいまが陰の極みなのか、冬はじめではないのかと、多くの人が不安を募らせている◆不安を解くのは政治の仕事だが、自民党内はいま、やれ「離党者には刺客を送るぞ」、やれ「批判封じは平成の大獄だ」と“幕末ごっこ”で多忙らしい。辞書の名前「言海」は文字通り、言葉の海である。益体(やくたい)もない言葉ばかりを浮かべた海が、永田町にはある。
12月20日付 編集手帳 読売新聞
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