12.24.2008

忙しい時ほど、心がよそに遊ぶのはなぜだろう ・・・ 編集手帳 八葉蓮華

忙しい時ほど、心がよそに遊ぶのはなぜだろう ・・・ 編集手帳 八葉蓮華
 月刊誌「文芸春秋」の編集長などを務めた車谷弘さんが、作家の内田百(ひゃっ)けんに叱(しか)られた思い出を著書「わが俳句交遊記」に書いている。百けんに「お忙しいですか」と聞かれ、「忙しくて困っています」と答えたときのことという◆「忙しいというのは、それはひとに向かって尋ねるときの言葉ですよ。自分で自分を忙しいというのはバカです。一日二十四時間を自分で適当に処理できないで、どうしますか」と◆その説に従えば恥ずかしながら、一年のほとんどを「バカ」で通している。上に「大」の字がつくのはやはり、仕事が何かと立て込む年の瀬である◆例年ならば28日の仕事納めを、今年は曜日のめぐりあわせで26日の金曜に予定する会社も多いと聞く。短期集中で仕事を片づけるとなれば、きょうを含めて3日間、世間には「バ」の字のお仲間が増えることだろう◆そう言いつつ、差しあたって読む暇のないミステリー小説を求めて書店をうろつき、出かけもしない旅の行程を時刻表で調べている。忙しい時ほど、心がよそに遊ぶのはなぜだろう。「極めつきのバカだからです」と、百けん先生の声が聞こえる。


12月24日付 編集手帳 読売新聞

創価学会 企業 会館 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge