12.27.2008

せめて心身の暖まる住処をと願わずにいられない ・・・ 編集手帳 八葉蓮華

せめて心身の暖まる住処をと願わずにいられない ・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 昔はなぞなぞ風に、「十階の身の上」とも言ったらしい。二階に厄介(八階)になっている――居候、別名では掛人(かかりゅうど)という

 江戸川柳には〈掛人小さな声で子を叱(しか)り〉〈居候ある夜の夢に五杯食い〉などと揶揄(やゆ)されているが、衣食住の「食」「住」をなくした失意の人に緊急避難の手を差し伸べる“人情の装置”を備えていた社会は、いまの目にはうらやましいものがある

 かつての昭和恐慌で、失業者の多くが農村に帰った。親きょうだいがいて、再起の時節を待つことのできた故郷もまた、緊急避難の装置であったろう

 今年10月から来年3月までに職を失ったか、これから失う非正規労働者は8万5000人にのぼり、すでに2000人以上が住む場所を失ったという。身を寄せる知人宅も、帰れる故郷も持たぬ人が増えたいま、大量失業の深刻さは数字以上だろう

 国が、自治体が、解雇した企業が、まずは持てる居住施設を総動員して“人情の装置”を作る。失業した人が百の同情よりも一つの安定した職を望んでいることは承知しつつ、底冷えのする夜、せめて心身の暖まる住処(すみか)をと願わずにいられない。

12月27日付 編集手帳 読売新聞

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