12.07.2008

「源氏物語千年紀」国内外で広く読まれている・・・ 編集手帳 八葉蓮華

「源氏物語千年紀」国内外で広く読まれている・・・ 編集手帳 八葉蓮華
 文豪も源氏物語を原文で読み通すことには難渋したらしい。森鴎外は明治の末、与謝野晶子が口語訳を出版した際に寄せた序文の中で「(原文は)とにかく読みやすい文章ではないらしゅう思われます」とぼやき、新訳で読めることを大喜びした◆今では谷崎潤一郎、円地文子、瀬戸内寂聴などが多彩な現代語訳を成し、鴎外のような苦労をせずに奥深い宮廷物語を味わうことができる。英語など約20の外国語に翻訳されてもいる◆日本が誇る「世界最古の長編小説」が国内外で広く読まれているのは、そうした訳者の功績も大きい。そしてさらに、目の不自由な外国の人にもぜひ読んでほしい、と考えた訳者がいた◆東京・世田谷の点訳ボランティア「紫会」の主婦5人だ。4年がかりで英語版の点訳39巻4400ページを完成させ、日本点字図書館などに寄贈した。その点字データはインターネットでも入手できる◆「源氏物語千年紀」の今年にふさわしい業績として、読売福祉文化賞を受けていただくことになった。いずれ世界中で、多くの人が点字をなぞりながら、心のスクリーンに平安絵巻を映すことだろう。

12月7日付 編集手帳 読売新聞

八葉蓮華、Hachiyorenge