12.18.2008

「はないちもんめ」記憶のかなたにまた一歩、遠ざかっていく ・・・ 編集手帳 八葉蓮華

「はないちもんめ」記憶のかなたにまた一歩、遠ざかっていく ・・・ 編集手帳 八葉蓮華
 遠い昔、路地裏や原っぱで、〈あの子がほしい、あの子じゃわからん〉と歌った方もあろう。子供の遊び、「はないちもんめ」(花一匁)である。〈勝ってうれしいはないちもんめ、負けてくやしいはないちもんめ…〉◆かつて口減らしがおこなわれた貧しい農村から子供を買い集めるとき、「花」(女児)1人につき金1匁が支払われた。中国史家、阿辻哲次(あつじてつじ)さんの「部首のはなし 2」(中公新書)によれば、字面も美しい「花一匁」には哀(かな)しい一説があるという◆1匁は3・75グラム、一文銭の重さ(一文の目方=文目)から生まれた単位で、匁という字は「文」と「メ」を組み合わせた形ともいわれる。いまでは真珠の計量以外で用いられることはない◆常用漢字表の見直しで、191字の追加と5字の削除が決まった。「匁」も削られる。「はないちもんめ」で遊ぶ子供を見かけぬようになって、すでに久しい。漢字表からも消えることで「匁」は記憶のかなたにまた一歩、遠ざかっていくのだろう◆1匁とはどれほどの重さであったかと、小銭入れを探ってみる。5円玉はぴったり3・75グラム、1匁である。

12月18日付 編集手帳 読売新聞

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