12.09.2008

「弁慶か、義経か」義経は八艘とんでべかこをし・・・ 編集手帳 八葉蓮華

「弁慶か、義経か」義経は八艘とんでべかこをし・・・ 編集手帳 八葉蓮華
 徳川家康がくつろいだ座談の折、「いまの世に武蔵坊弁慶のような剛勇の士はいない」と語った。と、頑固一徹の家臣、本多正重が異を唱えたという。「弁慶は幾らもござるが、義経のようなよい大将がござらぬ、て」◆いないのは弁慶か、義経か、迷走する組織を見るたびに、史書が伝える主従のやりとりが浮かぶ。本紙の世論調査で麻生内閣の支持率が20%台に急落した◆漢字の読み違いや失言もあったが、景気対策を盛った第2次補正予算案の国会提出を先に延ばすなど、「経済の麻生」という看板の偽りに人々は失望したらしい◆福田前内閣、安倍前々内閣がいずれも、“消えた年金”など官僚の不始末や政治資金をめぐる閣僚の醜聞により、いわば弁慶たちに足を引っ張られたのに対して、現内閣の場合は義経が自分で転んで招いた危機である◆古川柳に〈義経は八艘(はっそう)とんでべかこをし〉とある。壇ノ浦で八艘とびの離れ業を演じ、敵に「べかこ=アッカンベー」をする義経の得意顔を詠んでいる。総選挙の陣で野党に「べかこ」をする首相の姿を瞼(まぶた)に描くには、尋常でない想像力が要る。義経がいない。

12月9日付 編集手帳 読売新聞

八葉蓮華、Hachiyorenge