12.26.2008

元気でね/身体に気をつけてね/今度はいつ帰れるの ・・・ 編集手帳 八葉蓮華

元気でね/身体に気をつけてね/今度はいつ帰れるの ・・・ 編集手帳 八葉蓮華
 1週間ほど前の本紙で、「ゆめ」という詩を読んだ。〈今朝/死んだお父さんから/電話がかかってきたゆめを見た〉。作者は小学5年、茨城県鉾田市の少年である◆〈…ぼくは受話器をにぎりしめて/会いたいよって/泣きながら話してて/目がさめた/お父さんの声が/いつまでも耳にのこった〉。「天国に電話をかけなおせたらいいのに」と、「こどもの詩」欄の選者、詩人の長田弘さんが感想を添えている◆民間援助団体「ペシャワール会」の職員、伊藤和也さん(当時31歳)がアフガニスタンで武装集団に殺害されたのは今年8月である。12月の会報で母順子さん(56)の手記を読んだ。そこにも電話が出てくる◆よくぐずった赤ちゃんの昔を回想し、事件を境に父正之さん(61)の酒量が増えたことを告げ、供えるためだけのケーキを誕生日にこしらえる気の重さを語り、手記は息子に呼びかけて結ばれている。〈ではいつものように言うからね/元気でね/身体に気をつけてね/今度はいつ帰れるの/お母さんのいる時電話してよ/いってらっしゃい〉◆「天国に…」と、長田さんの言葉を胸に繰り返す。

12月26日付 編集手帳 読売新聞

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