きょうは各地で忠臣蔵の公演や行事が盛況・・・ 編集手帳 八葉蓮華
「大阪府下、谷町三丁目に忠臣蔵長屋と称(とな)へる四十六戸あり」。1882年(明治15年)の小紙に傑作な記事があった◆長屋の名の起こりは明治の初め、平民も名字を持つよう命じられたことだ。住人たちは困ったようで、数もほどよい四十七士にあやかることにした。歌舞伎「仮名手本忠臣蔵」の登場人物から、くじ引きで大星(由良之助)、寺岡(平右衛門)などの名字をもらった、という次第◆この長屋に高野(こうの)(高師直(こうのもろのう)=モデルは吉良上野介)さんが引っ越してきたので「偽士(ぎし)」たちは面白くない。「仇敵(あだがたき)の苗字(みょうじ)の者と同じ長屋に住まっては世間へ対し恥辱」と大家にねじ込み悶着(もんちゃく)中――というのが記事の要旨である◆これがニュースになるとは平和なことだ。敵役までみんなそろっていたほうが忠臣蔵長屋の名にふさわしいじゃないの、と120年前の出来事に思わず突っ込みを入れてみたくなる◆訳の分からぬ殺人やら、内定取り消しやら、現代の紙面に並ぶ記事の何と殺伐としたことか。きょうは各地で忠臣蔵の公演や行事が盛況だろう。それをながめつつ、明治の先輩記者をうらやましく思う年の瀬だ。
12月14日付 編集手帳 読売新聞
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