4.06.2009

「長距離弾道ミサイル」無頼漢国家ゴロツキが握れば凶器・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 白い露も、紅葉の上に宿ると赤く見える。〈もみじに置けば紅(くれない)の露〉という。置かれた状況で色合いを変えるのは露に限らない。野球少年が夢を託す白木のバットも、ゴロツキが握れば流血の凶器となる

 人工衛星の打ち上げも、弾道ミサイルの発射も、原理はひとつである。常識の通じる国が試みれば涼やかに白い月面が脳裏に浮かび、無頼漢国家の手にかかれば真っ赤な火の海が浮かぶ

 「人工衛星」に名を借りて、北朝鮮が長距離弾道ミサイルを発射した。核弾頭を載せれば核ミサイルになる。許しがたい狼藉(ろうぜき)である

 日米韓が結束して国連の場で圧力をかけ、何ひとつ見返りを与えることなく、核とミサイルから手を引かせなくてはならない。北朝鮮の甘言に乗せられて紅白の判別を誤り、テロ支援国家の指定を解いた米ブッシュ政権の苦い過ちは一度だけでいい

 茨木のり子さんの詩「水の星」に、ノアの箱船に触れた一節がある。〈善良な者たちだけが選ばれて積まれた船であったのに/子子孫孫(ししそんそん)のていたらくを見れば この言い伝えもいたって怪しい〉。密航の独裁者がまた、暴走のアクセルを踏んだ。

4月6日付 編集手帳 読売新聞
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