〈お殿さまでも家来でも/お風呂に入る時はみんな裸/かみしも脱いで刀も捨てて/歌の一つも浮かれ出る〉。終戦の翌年に封切られた映画「東京五人男」で古川緑波(ろっぱ)が歌った挿入歌を年配の映画ファンは覚えておいでだろう
歌詞の続きは記憶がおぼろなので、演芸プロデューサー沢田隆治氏の「上方芸能列伝」(文芸春秋)から引く。〈お役人でもボクらでも/夜の枕はみんな一つ/頭の中味(なかみ)はどっちがどっちか/歌の一つも浮かれ出る〉
お役人といえば頭がいいものと世評は定まっているが、「頭の中味はどっちがどっちか」、ときに分からなくなることもある
東京都の下水道局が制服2万着を新調した際に、いったん作成した胸のワッペンをすべて廃棄し、新たに作り直していた。「東京都下水道局」の文字に添えた水色の波線が内規と違うので削ったという。波線1本あったとて、誰が困る。何の支障がある。作り直しの費用が3400万円とは、豪儀なものである
夜の枕に頭を載せ、「一体、誰のお金を使っているつもりだか…」と独りごちれば、ため息の一つも浮かれ出る。いや、沈み漏れる。
4月14日付 編集手帳 読売新聞
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