4.29.2009

「新型インフルエンザ」人間もいくらかは賢くなっている・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 主人の苦沙弥(くしゃみ)先生が猫の写生をしている。尿意を催した猫が座を立ちかけるや、先生は「この馬鹿(ばか)野郎」と怒鳴(どな)りつけた。夏目漱石「吾輩(わがはい)は猫である」に、猫の独白がある

 〈少し人間より強いものが出て来ていじめてやらなくてはこの先どこまで増長するか分からない〉と。枯れ葉をお札に化けさせるような現代版の錬金術でつまずく国があったり、核とミサイルを独裁の道具に利用する国があったり、猫の心配もあながち的はずれではなかったろう

 豚インフルエンザがこれまで発生の恐れられていた「新型インフルエンザ」であることを政府が宣言した

 情報は不足している。メキシコでのみ死亡率が高い理由も、症状の詳細もまだ分からない。ウイルスは万国共通の敵である。各国の水際作戦を奏功に導くためにも、すべての国が「人類」というユニホームを着て緊密な情報交換を急がねばならない

 国際連携の大切さは、BSE(牛海綿状脳症)や鳥インフルエンザで学んできた。名前のない猫は知るまいが、人間もいくらかは賢くなっている。〈少し人間より強いもの〉の好きにさせるわけにはいかない。

4月29日付 編集手帳 読売新聞
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