NHKで「バス通り裏」というテレビドラマを放映した昭和30年代のことという。新潟県の農家から若い嫁が失跡した。ひと月ほどして、うちしおれて戻る。「どこにいたのだ」と聞くと…
「バス通り裏」は善人ばかりで、いつも愉快に暮らし、たいして働きもしない。私は一生を、田んぼの泥んこの中で終える。あの街にあこがれて上京した――そう答えたと民俗学者、宮本常一の「女の民俗誌」にある
テレビ画面に結ばれた美しい像が現実の手で破られることは、いまもままある。呼び捨てではなく、「クン」を付けずにはいられない清潔感と温かい人柄がにおう人に、深夜の公園での泥酔、全裸は似合わない
「SMAP」の草なぎ剛容疑者(34)が公然わいせつ容疑の現行犯で逮捕され、CMやキャンペーンに起用している企業などは対応に追われている。半世紀前の若いお嫁さんと同じように、うちしおれたファンも多かろう
才能があって、売れて、皆に愛されて、それでも法と常識を超えなくては晴らせなかった鬱屈(うっくつ)とは、何だったのやら。どれも持ち合わせぬ身は、何を脱いだらいいのか分からない。
4月24日付 編集手帳 読売新聞
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