没後30年を迎える六代目三遊亭円生さんにも「親の七光り」と後ろ指をさされた昔があるという。弟子で、のちに一門を離れた川柳川柳(かわやなぎせんりゅう)さんが自叙伝「天下御免の極落語」(彩流社刊)に書いている
〈(師匠が)真打ちになったとき、下手だけど、父の五代目円生が強引にさせた、という話は噺家(はなしか)ならみな知っている〉と。その人が“昭和の名人”になる。「七光り」批判の当否はどの世界に限らず、歳月による検証を待たなくては答えが出ない
次期衆院選の政権公約に世襲新人候補の「立候補制限」を盛るかどうかを巡り、自民党内で論争が起きている
〈父は巨万の富を積み/我は巨万の富を消す〉は長唄にある二代目紀伊国屋文左衛門の述懐だが、「富」を「名声」に置き換えれば政治家の名前が一つ二つ浮かばぬでもない。賛成派は世襲制限を証拠に、党の体質一新を有権者に訴えたいのだろう
紀文二世ばかりの国会では困る。さりとて未来の名宰相になるやも知れぬ器が、世襲だからと野に埋もれてもまた困る。「じつにどうもむずかしいもので、てへッ」と、円生さんの声が聞こえてきそうである。
4月23日付 編集手帳 読売新聞
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