4.16.2009

「これぞ秘宝のなかの秘宝」という触れ込みで宝石と称し、石ころを売った・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 出版社には各社独特の雰囲気がある。そう語ったのは作家の野坂昭如さんである。例えれば文芸春秋は〈株式会社〉、講談社は〈総合病院〉、中央公論社(現・中央公論新社)は〈単科大学〉、新潮社は〈古い貴金属店〉かな、と

 文芸春秋の名編集者で社長も務めた池島信平さんの対談集「文学よもやま話」(文芸春秋)で述べている。40年も昔の対談で、各社のカラーがその後どう変わったかは分からないが、好ましい変化ばかりでもなかろう

 朝日新聞阪神支局襲撃事件の“実行犯”を名乗る男性の手記を連載した「週刊新潮」が誤報であったことを認め、きょう発売の4月23日号に編集長名の謝罪記事を掲載するという

 「男性にだまされた」という言い分が本当だとしても、綿密な鑑定(裏付け取材)もせずに手記の品質を保証した落ち度は同誌にある。「これぞ秘宝のなかの秘宝」という触れ込みで宝石と称し、石ころを売った。〈古い貴金属店〉がなくした信用を取り戻すのは容易であるまい

 老舗の暖簾(のれん)に心を許し、息を詰めて食い入るように手記を読みふけったひとりである。ばかなことをした。

4月16日付 編集手帳 読売新聞
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