6.07.2009

「落とした財布」盗まれたと思い込んだことに自己嫌悪・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 東京の高尾山で財布をなくし、途方に暮れていた女性の携帯電話に、家族から連絡が入った。山の案内所に落とし物として届けられた後、中の診察券を手がかりに、かかりつけの医院へ、自宅へと問い合わせがリレーされたらしい

 ご本人が昨年末、東京本社版の読者欄に感謝の投書を寄せていた。「カードを使われたらどうしよう、などと悪用されるとばかり考えていた自分を恥ずかしく思いました」ともあった

 同様の投書を今年初めの大阪本社版でも読んだ。JR奈良駅で盗まれたと思った財布は、実はベンチの下に落としていて、JRの関係者が見つけてくれたそうだ。こちらも感謝とともに「盗まれたと思い込んだことに自己嫌悪」と告白していた

 昨年、全国の警察に届けられた落とし物は1733万点あり、前年より36%も増えたという。現金は141億円が拾得され、97億円が落とし主に返った

 本来、100%戻って来るのが理想ではあろう。でも、落とした財布はかなりの確率で届けられる。それに感謝して、世間を疑った自分を恥じる人がいる。日本もまだまだ捨てたもんじゃないね、と思う。

 6月7日付 編集手帳 読売新聞
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