6.18.2009

どうせ他人の金「お宝」そう悪いことをしたとも感じていないらしい・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 刑務所内の多彩な人間模様を活写した安部譲二さんの「塀の中の懲りない面々」(文芸春秋)に、“忠さん”という役所専門の泥棒が出てくる

 中央官庁から県立病院、国公立大学まで軒並み荒らし、警察署と法務省だけは量刑が重くなると困るので敬遠したという人である。忠さんが安部さんに語ったことには、役所相手の稼業は楽だという。〈役所はお宝の扱いがまるで雑なんだ。どうせ他人の金って気なんだろうよ〉

 金品の扱いがいまも雑かどうかは知らないが、時は金なり、「時間」の扱いが雑な役所は確かにある

 農林水産省の出先機関でこの3年間に少なくとも1400回の組合集会が、国家公務員法の禁じた勤務時間中に開かれていたという。「国家公務員法に触れるような組合活動については、あるともないとも言えない」。組合側のやけに堂々とした談話を読む限りは、そう悪いことをしたとも感じていないらしい

 その給料は国民が額に汗し、ときに苦しいやりくりをして支払った「お宝」の税金から出ている。忠さん、あなたの言った通りでした。〈どうせ他人の金って気なんだろうよ…〉

 6月18日付 編集手帳 読売新聞
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