6.26.2009

「空騒ぎ」虫歯は一刻も早く治療し、健康な歯はさらに念を入れて磨く・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 シチリア島の町メッシーナの知事が言う。〈歯の痛みに耐えられた哲学者はいない〉と。シェークスピアの「空騒ぎ」第5幕のせりふだが、虫歯とは厄介なものである

 宮崎県の知事が言う。「私を総裁候補にするなら、衆院選に自民党から出馬してもいい」。要請した自民党も昔ならば苦笑いで済んだのだろうが、口じゅう虫歯だらけの今はその余裕もない。知事の浴びせた冷水一滴に「痛い、痛い」と跳び上がる

 党の血液(体質)を入れ替えよ、とも東国原英夫知事は述べている。人気ブランドの化粧水を買うつもりが、「その顔で? 整形して出直しておいで」と追い払われた。軽率な要請で恥をさらしたと、党内には責任論の波風も立つ

 日本郵政の社長人事をめぐる筋違いの裁き、後を絶たない官製談合、“アニメの殿堂”金117億円也(なり)に代表される意義のあいまいな支出…と、麻生政権の虫歯はいくつもあるが、外交政策や安全保障政策のようにまずまず丈夫な歯もないではない

 虫歯は一刻も早く治療し、健康な歯はさらに念を入れて磨く。戯曲の題名そのままの「空騒ぎ」が残した教訓だろう。

 6月26日付 編集手帳 読売新聞
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