6.27.2009

あまりに早すぎる「奇妙な錯覚」歌い踊るスーパースター・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 群馬県高崎市で5歳の幼稚園児が誘拐され、い体で見つかったのは1987年(昭和62年)の9月16日である

 テレビのニュースで聞き及んだのだろう。その5日後、来日していたマイケル・ジャクソンさんは兵庫県・西宮球場での公演で、この男の子のしを悼み、「できればご両親のもとに出向き、お悔やみの言葉をささげたい」と観衆に語っている

 宇宙から来た異星人のように歌い踊る若きスーパースターは当時29歳、社会面の短い記事を読み、優しい心に感じ入った覚えがある。奇行の噂(うわさ)と、醜聞と、孤独の影を身にまとうのは40代を迎えてである

 急逝の知らせを聞く。50歳という。〈人生でいちばん危険なことは、かなえられるはずのない夢が、かなえられてしまうことなんだよ…〉。富と名声を極め尽くし、傍目(はため)には生きていく愉(たの)しみを見つけあぐねて苦しんでいるようにも映った後半生を思うとき、ミヒャエル・エンデの童話「モモ」の一節が浮かぶ

 あまりに早すぎる――と書きかけて、ためらうものがある。痛ましいほどに長く生きてしまった人を見ているような、奇妙な錯覚が脳裏を去らない。

 6月27日付 編集手帳 読売新聞
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