6.08.2009

若者パワーを求める「田舎ごこち」田舎に居場所を見つけた輝き・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 夢心地や乗り心地などと言うように、「心地」は何かをした時の気持ちを表す。様々な心地がある中で、「田舎ごこち」とは耳慣れないだろう。島根県庁の若手職員たちが、そんなタイトルの本を出版した

 映画「男はつらいよ」の「寅次郎恋やつれ」で、吉永小百合さんがマドンナ役を務めた舞台が島根県だ。風光明媚(めいび)な海岸線など美しい自然は変わらないが、人口の減少が止まらず、高齢者の割合が高いことが悩みのタネである

 それでも都会からのUターンやIターンで、農林水産業に就いた20~40代がいる。「鄙(ひな)びと」を自称する職員たちが、挑戦する同世代の生活を追いかけた

 予備知識ゼロから専業農家になったフリーター、養鶏業に転身したIT企業営業マン、岩カキの生産に取り組むシステム開発者――歩む道は違うけれど、田舎に居場所を見つけた輝きがある。彼らに続く後輩を誘うガイドでもあろう

 島根県の県魚は「アゴ」と呼ばれるトビウオだ。海面に飛び出し、胸びれを広げて滑空する。その飛び心地にあやかり、地域の勢いに弾みがつけば、若者パワーを求める他県のヒントにもなる。

 6月8日付 編集手帳 読売新聞
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