6.30.2009

時代を画した新開発の象徴「ウォークマン」30年が過ぎ、山あり、谷あり・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 マイクル・クライトンの空想科学小説「ジュラシック・パーク」はご存じの通り、“恐竜動物園”の物語である。その一節に、「ソニーのウォークマン」が登場する

 バイオテクノロジー(生命工学)の米欧企業が娯楽・レジャー分野の開拓競争にしのぎを削り、「(そうした企業は)“ソニーのウォークマンに相当するバイオ製品は何か?”と問いかけた」(ハヤカワ文庫)とある

 問いかけて得た答えが恐竜動物園であり、携帯音楽プレーヤー「ソニーのウォークマン」は時代を画した新開発の象徴として語られている。発売は1979年(昭和54年)の7月1日、あすで満30歳を迎える

 〈朝、僕は定期券とステレオをポケットに入れて家を出た〉。刺激に満ちた当時の広告コピーは30年が過ぎ、どこの家庭でも見られる普通の光景になった

 慧眼(けいがん)の作家から画期的新製品のお墨付きを得た「ウォークマン」も、だが今は、パソコンを用いて自宅の音楽コレクションを丸ごと持ち運べる米アップルの「iPod」に抜かれて、追う立場にいる。三十路の坂に至る道は人生と同じく、山あり、谷ありであるらしい。

 6月30日付 編集手帳 読売新聞
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